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プロがつくる教科書とは!?
2014年01月24日
今回は、私が尊敬する「ある人物」について述べたいと思います。
その人物は、
若いころから長年、芸能界で活躍し続けたものの、諸事情から芸能界を引退することになった元芸人さんです。
「元芸人」という表現から「誰のこと」を指しているのかは、だいたいお察しいただけると思いますが、実名は伏せてSS氏という表記で進めていくことにします。
私がなぜ現在でもSS氏のことを尊敬し続けているのかというと、芸能界で売れるために発揮されたSS氏の「戦略的な思考力」があまりにも素晴らしいためです。
この「戦略的な思考力」は企業経営にも十分に参考になると考え、『拝啓 経営者様 本音ブログ』で紹介させていただくことにしました。
19歳のとき、大学を中退したSS氏は、ある漫才師に弟子入りします。
まず、SS氏がすごいのは、その頃から次のことを肝に銘じていたそうです。
「努力は『正しい努力』をしなければ、どれだけ時間をかけても意味がない」
そして、芸能界で売れるためにSS氏がまず最初にやったことは、
「漫才の教科書をつくること」
だったそうです。
「漫才の教科書?」と思われた方も多いと思います。
「漫才を見たことがない」という方は恐らくいないと思うので、
一つ質問させてください。
もし、漫才を見て笑っているあなたに、次のように質問したら何て答えますか?
「あなたがこの漫才を見て笑うのは何故ですか?」
ほとんどの方が、
「・・・へ?」
という回答になると思います。
なぜなら漫才を見ている一般人は、「この漫才はなぜ面白いんだろう?」などと考えながら漫才を見たりはしないからです。
つまり、SS氏における「漫才の教科書づくり」とは、
自分が面白いと感じるプロの漫才について、
「なぜ面白いのか?」
「他の漫才と何が違うのか?」
を追求することだったのです。
「この漫才はなぜ面白いのか」、「他の漫才と何が違うのか」、について自分なりの結論を導こうと思えば、まず着手することは何でしょうか?
普通に考えれば、「その漫才を何度も見る」「その漫才を真似てみる」という結論に至りそうなものです。
しかし、SS氏は違いました。
もちろんSS氏もその漫才の音源を手に入れようとします。
その当時はVHSのビデオすら普及していない時代です。もちろんスマートフォンのような便利な道具もありません。
SS氏は、小型の録音機能付きテープレコーダーを劇場に持ち込み、
お客さんのフリをして隠れてその漫才を録音したそうです。
そして、録音したカセットテープを自宅に持ち帰り、SS氏は次の行動に出ます。
それは「文字おこし」です。
1枚の白い紙を用意し、録音した漫才を文字に書き起こしていったそうです。
紙いっぱいに書き込まれた一つの漫才のネタ。
SS氏の教科書づくりは、話している言葉を書き込むだけでは終わりません。
次にSS氏は、この紙にある情報を書き込みます。
それは、「時間」です。
1分経過時点、2分経過時点、3分経過時点、というように経過時間を書き込んでいったのです。
自分が面白いと思う漫才コンビ、ベテランの漫才コンビ、若いが人気のある漫才コンビ等、あらゆる属性の漫才コンビのネタに対してこの「教科書づくり」を行い、毎晩、寝る前に自分の作った教科書を睨みつけながらひたすら考えたそうです。
「なぜ面白いのか?」
「他の漫才と何が違うのか?」
SS氏の分析結果は以下の通りです。
・漫才のテンポは遅く、二人の掛け合い回数が多い。
・ネタは起承転結のある「良くできた作り話」が中心。
・お客さんはこの作り話にリアリティさが無ければ笑わない。
・ベテラン漫才師はリアリティさを出すための話術、演技力を持っており、「作り話」を「本当にあった話」のように表現している。
・これができるようになるには時間がかかる。
そして、SS氏はこの分析結果から「勝つ戦略」を見出すことに成功します。
ヒントになったのは、B&B(島田洋七、島田洋八)の漫才でした。
SS氏の「勝つ戦略」は次の通りです。
・ネタの中に「作り話」を盛り込まず、今の世の中に合わせた「リアリティーのある話」を展開する。
・漫才のテンポを速くし、一人が喋る時間を圧倒的に多くする。
・一人が圧倒的に喋ることで、二人の掛け合い回数を極端に減らし、時間当たりのボケの回数を極端に増やす。
・自分たちなりの漫才のテンポを習得するために相方と二人で早歩きしながら会話するトレーニングを積む。
この戦略から生み出された漫才が、
伝説の「ツッパリ漫才」です。
SS氏は漫才師として売れるため、まずは現在の市場を分析しました。そこから「この市場で勝つための差別化」を実行し、見事にブレイクしたというわけです。
ちなみにですが、
島田洋七さんは漫才コンビとしてブレイクしたSS氏にこう言ったそうです。
「人の漫才をパクるな!」
B&Bの漫才と紳竜の漫才を見比べて、「パクってるな」と気づく人はほとんどいないでしょう。
本物のプロというのは、
どの世界でも奥が深く、カッコいいものですね。
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